食道がん


食道は、のど(咽頭(いんとう))と胃の間をつなぐ長さ25センチぐらい、太さは2~3センチの管状の臓器です。背骨の前面やや左側にあって、気管、心臓、大動脈、肺などの重要な臓器に囲まれています。その食道に発生する悪性腫瘍(しゅ・よう)が、食道がんです。

日本では1年間に約1万5千人が食道がんにかかり、約1万人が死亡すると言われています。罹患(りかん)率、死亡率ともに男性の方が高く、女性の5倍以上です。50代以降、加齢とともに発生頻度が上昇し60代がピークです。

原因については詳しくわかっておりませんが、喫煙、アルコール多飲などが影響しているようです。

また、最近の研究で、ビールを1杯飲んだだけで顔が赤くなるようなアルコールへの耐性のない人は普通にお酒が飲める人と比べると、食道がんになるリスク(危険性)が8倍以上に上ることが明らかになりました。

アルコールをよく飲む方はもちろんですが、アルコールの弱い方でも定期的な検査を心がけることが大切だと思われます。

耳鼻科領域の咽頭や喉頭(こうとう)などのがんにかかられた方は、食道にもがんができやすいことがわかってきました。

多くの方は、食道がしみる感じや食物がつかえる感じなど、何らかの食道の違和感を訴えられます。

しかし、2割の方は、無症状で健康診断や人間ドックの際に内視鏡検査などで偶然に発見されます。進行した例では、体重減少やせきなどの症状が認められ、時には声がかすれたことによって、発見される場合もあります。

これは、食道のすぐ近くに声を出すための神経があり、この神経にがんが及んだために出現する症状です。

診断には、まずX線(レントゲン)検査と内視鏡検査が行われます。この二つは、がんの大きさと位置を見るのに適している検査です。内視鏡検査の際、腫瘍の一部を採ってきて顕微鏡でがん細胞の有無をチェックします(これを生検といいます)。

がんの存在が確認されるとがんの進行度の検査を行います。がんの深さ、他臓器やリンパ節への転移は、CT検査と超音波内視鏡を用いて調べます。転移診断にはPET検査が特に有効です。

食道がんの治療には大きく分けて、内視鏡治療、手術、抗がん剤治療、放射線治療の四つの治療法があります。

病気の進み具合と全身状態によって治療法が選択されますが、ある程度進行したがんでは、いくつかの治療を組み合わせて行うこともあります。

内視鏡治療は、内視鏡を用いて食道の内側からがんを切り取るという治療です。リンパ節転移のない粘膜がん(表面の浅い部分のがん)が治療可能です。内視鏡治療が可能な段階で見つかると、体の負担も少なく完全に治る可能性も高くなります。

手術は、がんが発生した食道の大部分と転移する可能性があるリンパ節を一緒にとってしまう治療です。食道がんの多くは、胸の中の食道に発生するので、切除するために胸を開く(開胸手術)必要があります。

食道の壁の中と周囲にはリンパ管や血管が豊富です。がん細胞がリンパ管や血管内に入り込み、食道以外の場所に定着しそこで増え始めることを転移といいます。

食道は首(頸(けい)部)からおなか(腹部)までの長い臓器なので、病気の部位にかかわらず、頸部、胸部、腹部のリンパ節へ広範囲に転移することが多く、この三つの領域のリンパ節を取り(リンパ節郭清)かつ食道を切除するのが標準的な手術方式です。頸部、右胸部、腹部の3カ所に傷がつきます。

食道がなくなるので、胃を頸部まで持ち上げて食道の代わりにします。手術時間は7~8時間です。操作する部位が多く、時間も長いため合併症の多い手術でしたが、最近では技術の進歩により多くの方が1カ月以内で退院できるようになってきました。

病気が進行すると、食道の周囲にある気管、大動脈、肺、心臓といった重要な臓器に病気が直接食い込んでいくことがあり(臓器浸潤)、このような場合、手術は実施できません。

抗がん剤治療は薬を用いてがん細胞を殺す治療です。食道がんでは現在のところ、根治治療として抗がん剤単独の治療はありませんが、食道以外の臓器に転移が見つかった場合や再発例では手術はできず、抗がん剤治療が行われます。

昨年、日本の研究で、手術をする前に抗がん剤治療を行った方が治療成績が良いことがわかり、手術前に併用されることが多くなりました。

放射線治療は主に身体の外からX線などの放射線をあて、がん撲滅を目指す治療です。食道がんは他の消化器のがんに比べて放射線がよく効くことが知られています。

また、放射線単独で治療するよりは、抗がん剤と併用した方が効果的であることが分かってきて、両者を併用する放射線化学療法が注目されています。この治療が効果的であれば、食道や胃の機能が残り、手術の傷がないなどの利点があります。

一方で、一度消えたがんがまた出現したり、治療後数年してから、食道周囲の臓器が放射線の影響で慢性的な炎症(肺炎や心嚢(しんのう)炎)を起こしたりすることが問題になっています。

主治医とよく相談をして治療法の選択をしてほしいです。

 

 

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日時:2009年4月 3日 09:27

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