がんの末期にリンパ節に転移が広がってリンパ浮腫になることがある。終末期のがん患者が安らかに日々を過ごす緩和ケアの中でもリンパ浮腫の治療が注目されている。
青森県上北郡の女性(79)は今年2月、二男(当時47)を肝臓がんで亡くした。昨秋にがんがわかった時はすでに周囲に広がっていた。年末、がんの激しい痛みが突然襲った。「苦しい、苦しい。この苦しみをどうにか取り除いてくれ」。通院していた十和田市立中央病院に駆け込み、入院することになった。
仕事と育児で手が離せない二男の妻に代わり、泊まり込みで看病した。痛みは薬で治まったが、がんが腹膜や骨盤内のリンパ節にも広がり、両足がむくんできた。病院のリンパ浮腫外来の看護師、石川美帆子さんからむくみを減らすマッサージを習った。
足の先から腰まで、リンパ液を戻すように優しくなで上げる。30分ほどすると張っていた足が柔らかくなった。「何もしてやれないから、これで楽になるんだば、いいと思って」と毎日、汗をかきながら息子にマッサージを続けた。
二男は次第に食が細くなり、眠る時間が長くなった。そっと見守っていたある日、突然、目を開けて、「ばあさん、今日はもみもみしないね」とつぶやいた。その言葉は今も心に残る。「話すことも少なくなっていきましたが、息子も楽しみにしていたんだなと思いました」
この病院のリンパ浮腫外来は、2006年に始まった。その前年、緩和ケアが専門の蘆野(あしの)吉和さんが院長に着任し、職員向けに講師を招いて開いた「緩和ケアセミナー」にリンパ浮腫治療の講義があった。感銘を受けた石川さんら看護師3人と作業療法士1人が、自発的に東京や青森市で研修を受け、設立した。研修費は病院が出してくれたが、交通費や滞在費は貯金をはたいた。
外来は、たちまちリンパ浮腫患者の予約でいっぱいになった。今年中には1週間程度入院して集中的に治療するコースも始める計画だ。一方、末期がん患者の場合は、主に家族に治療法を伝授する。「触れ合う時間を共有することで家族の心の支援にもなるように思います」と作業療法士の新谷(あらや)亨さん。
蘆野さんは「マッサージを受けることで非常に安楽な状態で毎日を過ごせる人もいる。緩和ケアの中でもリンパ浮腫治療は重要な要素の一つ」と話す。
(2008年9月18日 読売新聞)

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